Australian Ballet@David H. Koch Theater

オーストラリアバレエの「白鳥の湖」を鑑賞しにDavid H. Koch Theaterへ。
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今年カンパニー設立50周年だそう。オーストラリアバレエのNY公演は1999年以来。
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グレアム・マーフィー振付版「白鳥の湖」は初めてだったので、こちらで予習。

英国王室のスキャンダルを題材にしてオデットがダイアナ妃、ジークフリード王子がチャールズ皇太子
ロッドバルト男爵夫人がカミーラ夫人 という設定。(ラストは現実とは違いますが)
古典の「白鳥の湖」とは違って、モダンな演出。

Odette: Amber Scott
Prince Siegfried: Adam Bull
Baroness von Rothbart: Lana Jones


プロローグ、無音で幕開き。白いドレスを着たオデットの後姿。
両腕を胸の前で交差させ、両手を動かす仕草が鳥を連想させるよう?
観客の方を向くと、序曲がスタート。悲劇を予感させるような不安そうな表情。
結婚式前夜なのに、黒いカーテンの向こう側でジークフリード王子が
ロットバルト男爵夫人と逢引中。いきなりベッドシーンで18禁?
マチネだったので、子供連れがけっこういたけど。。。

一幕、湖のある庭園でロイヤルウエディング。招待客が集まってくる。
男性はグレーの軍服かスーツ、女性は白を基調にしたドレス&正装用の帽子。
詳しいキャスト表がなかったけど、アジア系女性ダンサーは日本人なのかな?
子供達は、なぜか釣りや凧揚げをする。
2人の士官(ゲイカップル?)がダイナミックに踊って、目立っていた。
白とグレーを基調とした明るい舞台と衣装が美しく
途中ダンサーたちの動きがフリーズして、スローモーションになるシーンが
絵画のようだった。

軍服姿の王子とウェディングドレスのオデットが、舞台下手のバルコニーに登場。
トレーンが長くて、王子がオデットを包むようにしてたけど
ちょっと踊りにくそう。オデット役アンバー・スコットは清楚なカンジ。
ジークフリード王子役アダム・ブルは、推定身長193cm?金髪巻き毛でカッコいい。
お色直し?で退席中、招待客たちが踊る。

王子がグレーのスーツ、オデットは白い膝丈ドレスに着替えて再登場。
ロットバルト男爵一家が登場すると、王子は落ち着かない様子に。
女王が夫と登場するけど、オデットは女王に嫌われてるよう。

舞台上手に小さなステージがあり、ロットバルト男爵夫人が結婚のお祝い?を披露するよう。
ロットバルト家の紋章?のような幕が上がり、黒とゴールドの衣装を着た男女が
ハンガリーの民族舞踊チャルダッシュを踊る。(ロットバルト男爵夫人はハンガリー出身?)
同じ衣装を着たダンサーが現れて群舞になる。
ちょっと淫靡な雰囲気から、弾むようなリズムでテンポが速くなって
迫力あり!客席からも拍手。演奏はNYCBのオケですが
オーストラリアバレエ音楽監督Nicolette Fraillion指揮でガンガンいきます。

パ・ド・トロワのアダージョでは、王子とオデットとロットバルト男爵夫人の踊り。
3人の愛憎関係を表しているようで、王子とロットバルト男爵夫人の間に
オデットが割り込もうとする。
苦悩する王子のソロがあるんだけど、全く共感できない~
バレエの男性キャラは、古典でも現代版でも優柔不断だ。

女性ヴァリアシオンの曲で、女性招待客達が踊り
男性ヴァリアシオンの曲では、男性招待客達がダイナミックに踊る。
男性ダンサーは生きがよくて、長身イケメンが多い。
コーダでは男女ペアになって踊り、チャルダッシュ組も加わって盛り上がります。

王子&男爵夫人にブチ切れたオデットが乱行。
古典では黒鳥PDDで用いられる音楽で、王子へのあてつけのように
次々と男たちの間を渡り歩き絡むシーンは、マノンのよう。
「ジゼル」の狂乱のシーンのように湖に身を投げようとしたところを
男性客達に止められます。

ちなみにこのマーフィー版は、チャイコフスキーの原譜に忠実に作れてるようで
プティパ版を聴きなれて原譜を知らない人には、曲順が不自然に感じるかも。
黒鳥PDD(原譜では一幕に配置されてたのをプティパ版で三幕に移された)が
1幕に戻されていたり、繰り返しもすべて演奏されたり
今ではチャイコPDDと知られてる曲が削除されずに、3幕で使われています。
私がいつも家で聴いてるのは原曲版なので、違和感がなく楽しめました。

アダージョで、オデットに冷たく当たる王子。
王子ヴァリアシオンの曲では、男爵夫人が踊り
コーダでは、人々の中からオデットがフェッテをしながら周囲をはねつけ
飛び出してくる演出が面白い!古典の振付を知ってるとより楽しめますね。
周りを蹴散らして、王子も蹴飛ばしてました。

道化の曲で、寂しそうにオデットが踊り
男爵夫人が女王に耳打ちして、医者らしき男とナース二人が登場。
狂人扱いされたオデットは、サナトリウムに入れられてしまいます(涙)

音楽が「フィナーレ」になって、人々が去った後
男爵夫人が玉座に座って微笑み、王子を招きます。
真紅のルージュが目を引くラナ・ジョーンズは、流し目が美しく
悪女っぷりがハマッてました。

古典の1幕は好きでないんだけど、この版はドラマチックな展開で見応えあり!

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インターミッションはさんで、二幕は白鳥らしい演出でオデットの心象風景。

精神を病んだりナースが怖そうに見えるのが、マシュー・ボーンの「スワン・レイク」っぽい。
サナトリウムに幽閉されたオデットは、寒々しい白い部屋で絶望に打ちひしがれる。
看護婦達がかぶるナース・キャップから白鳥をイメージしたのか?想像の世界へと逃避。
儚げなアンバー・スコットはオデットにピッタリで、悲哀が感じられました。

窓越しに見える王子と男爵夫人の逢瀬(これも妄想?)を前後に挟んだ舞台転換。
音楽の使い方が絶妙で、古典版の王子登場やロッドバルト登場シーンの音楽で
王子やロットバルト男爵夫人が現れます。

想像の湖が舞台奥に設えられて、斜めになった円形の台に優美な白鳥の群舞。
凍った湖にいる白鳥たちが、傷ついたオデットの心を癒します。
台から下りてきたコールド16人に、小さい4羽と大きな2羽が加わる。
白鳥たちの髪飾りが、ナース・キャップを連想させるんだけど
オデットは、白衣のナースたちを白鳥の群れだと思ったんでしょうか。

群舞のフォーメーションが独特で面白い。ポワントをはいたオデットが登場してソロの踊り。
腕の使い方がしなやかで柔らかいアンバー・スコット。
プティパ版を1小節前倒しにしたような?四羽の白鳥の振付けもユニーク。
繋いだ手は、どうなってたんだろう。大きな白鳥の踊りは綺麗。
グラン・アダージョの音楽で、王子とPDD。コーダで群舞とオデットが踊り
古典と同じくラストは王子がオデットを高々とリフト と思ったら
現実に引き戻されます。。。

アクロバティックなリフトが多い王子役は、過酷な振付!

インターミッションはさんで三幕 ロットバルト男爵夫人主催の舞踏会。
ロイヤルウェディングの明るい美しさと対比した、ゴシック調な黒いセットが退廃的。
男性陣は黒いタキシード、女性達の黒地に金銀のラメを織り込んだドレスが素敵。
妖艶なロットバルト男爵夫人と王子、客達が踊ります。

ファンファーレが鳴り響き(古典のオディール登場音楽で)
来るはずのないオデットが、白いヴェール&純白のドレスで登場。
どこかイっちゃってる感があるけど、清らかな美しさに魅せられる王子。
オデットとロットバルト男爵夫人の立場が逆転。
プティパ版とは逆で、発想が面白い演出。

チャイコフスキーPDDの曲も、原曲通り。(本来、黒鳥のPDD用に作られたもの)
オデットと王子の愛が奏でられ、男爵夫人は王子にすがりつくも見向きもされない。
ロシア(ルースカヤ)の曲で、男爵夫人のソロ。見せ場でした。
怒り悲しみ、髪飾りが取れるほど激しく感情的になる様子が切ない。
優柔不断な王子に翻弄されて、同情してしまう。。。
嫉妬した男爵夫人は、オデットをサナトリウムに戻そうとしますが
オデットは、夜の闇へと逃げ去ります。
王子は男爵夫人を振り払ってオデットを追い、男性達にオデットを探すよう命じます。
誰もいなくなったパーティー会場に、男爵夫人だけが取り残されます。。。

休憩なしで四幕、想像のでなく、本物の湖。
湖畔でウェディングドレス姿のオデットを見つけて、抱擁する王子。
が、王子の腕に抱かれても、傷ついた魂は癒えず
オデットはウェディングドレスを脱ぎ捨て、黒衣になり黒鳥たちの群れの中へ。
舞台中央に円形の斜め舞台が再び登場。黒い布で覆われてます。
二幕の白鳥たちが、オデットの絶望を表すよう黒鳥になっています。

王子とオデットのPDDの後、ロットバルト男爵夫人が現れて王子にすがります。
オデットは王子のもとを離れて、暗い湖に身投げ。吸い込まれるように消えていきます。
黒い湖が真っ白に変わって、オデットへの永遠の愛を誓う王子。

ペアスケートのようなリフトや複雑なサポートをこなしていたアダム・ブル。
アンバー・スコットは、心理的変化が激しいオデット役を好演。
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見応えのあるエンターテイントメントで、スタンディングオベーション!
黒と白が象徴的に使われていて、演劇的でオリジナリティもあり
ストーリー展開が上手くて、引き込まれました。
マシュー・ボーンの白鳥の影響を感じなくもなかったけど、面白かったー
ところどころプティパやイワノフ、バランシンの振付を取り入れたカンジで
クラシックだけでなく、コンテンポラリーな要素も入ってる振付。
円形の台を使った舞台装置も斬新で
古典版「白鳥の湖」の音楽の使われ方を知っていると、より楽しめます。

テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術