FC2ブログ

Anna Karenina@MET

マチネに続いて、250年の歴史を誇るマリインスキーバレエ
演目が発表された時に、迷わず決めたAnna Kareninaを鑑賞。
Anna Karenina2

Side ParterreとGrand Tier BoxとDress Circleが同じ値段 という
不思議な?価格設定だったため、迷わずSide Parterreを購入。

トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」を基に
シチェドリンがボリショイバレエために1972年作曲。夫人のプリセツカヤが主演・振付。

マリインスキーでは、音楽チャイコフスキー・プロコフスキー振付版を
レパートリーにしていましたが
ラトマンスキーがデンマーク・ロイヤル・バレエのために振り付けたのを
改訂して2010年マリンスキーバレエで初演。アメリカではこのNY公演が初演です。

Anna Karenina9
原作トルストイ、音楽シチェドリン、振付ラトマンスキー、指揮ゲルギエフ 
マリンスキーバレエによるオール・ロシアな舞台。
小説では、トルストイの分身とされるリョーヴィンが主役で描かれていますが
バレエの主役は、タイトル通りアンナ・カレー二ナで
マリンスキーには珍しく?男女の愛憎劇を描いたドラマ・バレエ。

3通りのキャストがあり、ヴィシニョーワはABTでも見られるので
ロパートキナコンダウーロワかで悩んだのですが
3年前NY公演で印象に残ったロパートキナを観ることに。
年齢的に、今後NYで見られるチャンスが少なそうなので。。。
Anna Karenina3

Anna Karenina: Ulyana Lopatkina
Count Vronsky: Yuri Smekalov
Alexei Karenin: Islom Bainuradov


プロローグ、アンナが亡くなったと思わせるシーンから
ラストシーンの悲劇がここで予告されています。

ヴロンスキーの回想から一幕、モスクワ駅。
兄スティーヴァ・オブロンスキーと兄嫁ドリイの仲裁をしに
ペテルブルグからアンナが汽車でやって来て、兄オブロンスキーに出迎えられる。
そこで、母を迎えに来た若い将校ヴロンスキー伯爵と出会ってしまうアンナ。
二人が視線を交わした瞬間、時が止まります。
駅で、列車に飛び込み自殺をする男と男の死を嘆く妻を目撃してしまい
これがラストシーンへの伏線となっています。

シチェルバスキー家、純朴なリョーヴィン(オブロンスキーの友人)はアンナの兄嫁の妹
キティに求婚するが、エリート軍人でハンサムなヴロンスキーとの結婚を夢見るキティに
断られてしまう。お気の毒。。。

華やかな舞踏会、やっと踊りのシーンです。
ヴロンスキー役のユーリ・ スメカロフは、長身でスタイルが良く
いかにもプレイボーイっぽいカンジ?若くて熱情的な踊り。
エイフマン・バレエのソリストで、プルシェンコ「ニジンスキーに捧ぐ」の振付をしたり
ガチンスキーの振付もしてました。

それまでキティと仲良く踊ってたのに、人妻アンナと再会したヴロンスキーは
彼女の美貌に目が眩んで惹きつけられます。
ロパートキナは少し愁いを帯び、倦怠にとらわれた伯爵夫人にピッタリ。
アンナの対極である可憐なキティは、ヴロンスキーとマズルカを踊ってもらえず
泣いて立ち去ります。キティかわいそう。。。

雪の舞い散る中、アンナのソロ。躊躇さを感じる複雑な心理が垣間見られます。
ヴロンスキーへの恋心から逃れるように、夫と息子が待つペテルブルクへ。
再び列車に乗って帰り、駅に妻を迎えに来る高級官僚アレクセイ・カレーニン。
権力と富は有するものの、面白味に欠ける年上夫をバイムラードフが好演。

小説でも重要なシンボルとなっている列車が、セットで(息子セリョージャのお土産にも)登場。
背景にアンナのアップ映像を映したり、プロジェクターで景色を映し出して
場面転換がわかりやすく、現代的な手法が効果的に使われています。
実物大の列車が右へ左へと音をたてて回転し、臨場感溢れる演出。
アンナを追って、同じ列車へ乗り込むヴロンスキー。

友人ベッツィのサロンで、ヴロンスキーと再会したアンナのただならぬ様子に
感づいた夫カレーニンは、昔の因習に縛られて世間体を気にします。
が、アンナのヴロンスキーへのざわめく気持ちは抑えがたく
とうとう夫に隠れて彼と会ってしまい、道ならぬ恋へ。
(1870年代ロシアでは離婚には教会が関与し、不倫した者は再婚できず親権は与えられません)

セリフなしでも、ストーリーが自然にわかる綿密な描写で
小説を再現した演劇的なバレエ。情感のゆれを視覚化したモダンな振付で、衣装も素敵☆
社会の足枷を解き放ち、ヴロンスキーのもとへ走るアンナの思いが表現されたPDDで
ケミストリーを感じた2人のパートナーシップも見事。

インターミッションはさんで、二幕。
出場した馬術レースで、落馬をしてしまうヴロンスキー。
その様子を見て、心配して取り乱すアンナは
狭い貴族社会のゴシップになることを恐れた夫カレーニンに厳しく咎められる。
古い社会通念の中に押し込めようとする夫を愛せなくなってるアンナ。
2人の間に、深い溝が。。。

アンナが病で重態となり、生死の境を彷徨います。
憔悴とした様子に心を動かされたカレーニンは、憎しみの言葉を飲み込んで妻を赦します。
アンナを失うことに絶望したヴロンスキーは、ピストルで自殺未遂。
そのことをベッツィから聞いたアンナは、再びヴロンスキーのもとへ。

アンナ、ヴァロンスキー、カレーニンのパドトロワが見応えあり!
イワンと仔馬」とは全く異なるキャラを演じるバイムラードフ。同一人物に見えない~
厳格なカレーニンが妻の不貞に悩み、尊大に許しを与えようとする
複雑な心理や葛藤を演じます。

ヴロンスキーは、回復したアンナを連れてイタリアに住むも
幸せの絶頂は短く、夫の元へ残してきた息子セリョージャを思うアンナ。
強引に手元に引き取ることができず(ヴロンスキーは自分ほど息子を愛さないだろうし)
セリョージャとの面会を許されない苦しさ。
ロパートキナが息子への強い愛情を表現。
息子と愛人ヴロンスキーとの間で揺れ動く苦悩が切ない。。。

華やかな社交界で活躍していた2人が、今は友人さえいない生活。
アンナは気が進まないまま、ヴロンスキーに説得されて故郷へ戻ることに。
モスクワに帰ったところで、閉鎖的な貴族社会から疎外され蔑まれたままで
アンナには、居場所がありません。

社交界から締め出されているのに、わざわざオペラ座に出掛けていくアンナと
次第に気持ちがずれていくヴロンスキー。
一人息子にも会えず、地獄のような孤独、自身の境遇に不満なアンナは
ヴロンスキーへの猜疑心でヒステリックになります。
ラストのPDDは、マノン3幕の沼地PDDっぽい雰囲気。
追い詰められたような激しさがあって、刹那的な二人の踊り。
クライマックスへと向かっていくのを感じます。

愛する息子セリョージャを失った今
ヴロンスキーとの恋に身を投げることが、生きること だったのに
その恋が終わることは、アンナにとって 死 を意味します。
ヴロンスキーと出会った時に目撃した、列車に飛び込んで亡くなった男が自身と重なります。
何もかも失ったアンナの精神状態を表現するロパートキナが、悲しく美しい。
絶望したアンナが、舞台奥から迫り来る列車に身を投げて幕。

Anna Karenina4
終演後はスタンディングオベーション、観客を感動の渦に巻き込みました。
Anna Karenina7

しっとりと落ち着いた大人のドラマ。衣装変えも多く
情景描写として描かれるロシアの貴族生活が、華やか。
主役二人は、ずっと踊りっぱなしでタフな振付。
PDDはアクロバティックなリフトの連続が多くて、疾走感も素晴らしく
感情の高ぶりがダイレクトに伝わり
救いようのない悲劇なのに、美しく演じられて魅せられました。

Anna Karenina8
ロパートキナは、さすがの表現力で女優ぶりを発揮。
Anna Karenina10
拍手喝采を浴びた二人、最後までテンションの高い演技で引き込まれました。

緊迫感溢れるゲルギエフの指揮、シチェドリン音楽は原作が悲劇なだけに
全体が暗いトーンで覆われていますが、心情を表現したような
比喩的でリズミカルな音や不協和音もあり、斬新でした。
ラストの汽車が迫り来る音は、男性が2本の棒を握り締めて交互に床を叩いていました。

Anna Karenina1
ラストシーン↑

写真

イワン・クラムスコイが描いた「忘れえぬ女(見知らぬ女)」のモデルは、実在の人物とも
アンナ・カレーニナとも言われていますが(真相は不明)この絵のイメージにピッタリ。
関連記事

テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する