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Lady of the Camellias@MET

バレエ「椿姫」を鑑賞しにMETへ。
振付したジョン・ノイマイヤーは、デュマ・フィスの小説を愛読してたそうで
オペラと違って、原作により忠実です。

Lady of the Camellias3
デュマ・フィスと恋仲だったパリの高級娼婦マリー・デュプレシがモデルとなった小説。

音楽もオペラと異なり、ノイマイヤー自身がポーランド人の血をひいていること
ショパンも(マルグリッドのように)若くして病に倒れたこと
19世紀中頃、社交界でショパンがもてはやされたことから
小説と同時代のショパンの曲が使われています。
(ショパンとジョルジュ・サンドとの恋愛関係も想起させる)
数日前からショパンを聴きながら原作を読んで、どっぷり物語に浸ってました。

初演1978年シュトゥットガルト州立歌劇場、ABT初演は2010年。
昨年見逃したので初めての鑑賞。「踊るギリシャ彫刻」と呼ばれるボッレがお目当てです。
Lady of the Camellias1

Marguerite Gautier: Julie Kent
Armand Duval: Roberto Bolle
Manon Lescaut: Veronika Part
Des Grieux: Eric Tamm
Monsieur Duval: Victor Barbee
Prudence Duvernoy: Xiomara Reyes
Gaston Rieux: Jared Matthews
Olympia: Hee Seo
Count N.: Julio Bragado-Young


開演前から緞帳が上がっていて、舞台にはいくつかの家具が置かれて
「Auction 16 March 1847」と書かれた看板があります。
指揮者入場も拍手もなく、音楽なしで無言のお芝居がいつの間にか始まります。
Lady of the Camellias4

プロローグ、マルグリット邸で遺品の競売風景。客席の明かりがついたまま
黒マントを着たナニーヌ(マルグリッドのメイド)が登場。
全員喪服のような黒の衣裳で、男達が次々と入ってきて家具を運び出しています。
N伯爵やデュヴァル氏、プリュダンス、オリンピアがやって来て部屋の中を見渡しています。
ソナタ第3番ロ短調作品58第3楽章(2人のテーマ曲)を試し弾きする男性
そこへアルマン演じるボッレが風のように登場、客席は拍手☆
マルグリッドの死を知り悲しみで倒れ、父親に抱きかかえられます。
紫のドレスを手にとるアルマン。客席が暗くなり指揮者がピットに入ると(拍手する間もなく)
ピアノ協奏曲2番1楽章が演奏され始め、舞台後方が赤いカーテンになり
アルマンの回想シーンが始まります。

1幕、バレエ「マノン・レスコー」を観劇しにヴェリエテ座に来る人たち。
艶やかな紫色のドレスを着たマルグリッドと彼女を取り巻く男性達。
一目惚れしたアルマンはガストンに紹介してもらうも、冗談で椅子をはずされ転んでしまう。
劇中劇「マノン・レスコー」を演じるのはパルト、デ・グリューはエリック・タム
そういえば、しばらくマノンを観てないなぁ。大好きなバレエだからまたABTで上演してほしい~
美人で色っぽいパルトはマノンが似合ってたけど、彼女をリフトするのは大変そう。
ケントは華奢な体が儚げに見えて、翳りのあるマルグリッドの雰囲気にピッタリ!
マノンに自分自身を投影させます。
アルマンもデ・グリューとミラーの踊りで自分を重ね合わせます。2人の未来を暗示してるよう。

ガストンやプリュダンスと一緒に、マルグリットの家に誘われたアルマン。
レイエスは、プリュダンスの雰囲気がよく出てました。
しつこいN伯爵、マルグリッドに冷たくあしらわれてかわいそう~
胸が苦しくなって寝室に駆け込んだマルグリッド。背中を反らせるポーズが美しいケント。
そこに現れるアルマン。2楽章が始まり、紫のPDDを踊ります。
心理描写を表すしっとりした振付。アルマンの熱情に心を動かされるマルグリッド。
赤い椿を胸に挿されて再会を約束し、夢見心地のボッレ。
3楽章が始まり、夜会の合間に逢瀬を重ねる2人。奔放な暮らしぶりで衣装替えが華やか☆ 
公爵を説得して田舎へと旅立つところで一幕終了。まんま小説の世界でお芝居を見ているよう。

2幕、公爵(マルグリッドのパトロン)のプージヴァルの家。この幕はピアノ演奏のみ。
作品34-1 華麗なる円舞曲で、幕が開きます。
避暑地っぽい籐の椅子に腰掛けたマルグリッドは、アルマンや友人たちと楽しそう。
シムキン、加治屋さん、レーン、サルステイン、リチェット、メスマー
ソリストに昇格したばかりのボイルストンなどが友人役で踊って、見応えあり。
3つのエコセーズにのせて踊るレイエス、キレがあって良かったです。
ガストン演じるマシューズの笑いを誘う踊り。意外な一面を見せてくれました。

公爵が訪れて突然ピアノの鍵盤を叩いて、アルマンとマルグリッドを睨みます。
公爵にもらった首飾りを彼の足元に投げ捨てるマルグリッド。決心が表れています。
首飾りをチャッカリ拾っていくプリュダンス。
美しい白のPDD。純白のドレスがふんわりと舞います。
男性ダンサーにはハードな振付で頭上に持ち上げたり、肩の上にのせて走ったり
回転させたり、とリフトが上手いボッレ。甘美な雰囲気たっぷりで
ふわふわと雲の上にいるような、宙に漂う姿が美しい。
しなやかに踊るケント、穏やかな幸福感が伝わってきます。

アルマンの父の来訪を知ったマルグリットは彼を外出させて、髪を整えデュヴァル氏を迎えます。
デュヴァル氏だけタイツでなくて、ほとんど踊らない役ですが
ここで少しだけマルグリッドとの踊りあり。実生活では夫婦の2人、息もピッタリ。
彼への真実の愛を訴えても、アルマンとその家族を不幸にする とデュヴァル氏に拒否されます。
前奏曲「雨だれ」で踊ってると、マノンの幻想(男達に宝石で飾られた過去)に押しつぶされて
マノンのようにはなるまい と身を引く決心をします。
アルマンを欺いて、誤解と恨みを引き受けることに。
戻ってきたボッレと再び白のPDDのコーダ、ケントの苦悩の表情が切なさを物語ります。

マルグリッドが手紙だけを残してパリに戻ったことを知ると、ショックと怒りで激しく踊るボッレ。
前奏曲第24番で激情が伝わってくる迫力あるソロが素晴らしかった!
躍動感のある踊りで舞台狭しとジャンプ、凄いスピードで駆け抜けてパリへ戻りますが
マルグリットが寝室で男といるのを見て、絶望と悲しみで倒れてしまい2幕終了。

3幕でようやく指揮者の挨拶と拍手。偶然シャンゼリゼで再会する二人。
かなりやつれたマルグリッドは、N伯爵がエスコートして
裏切られたと思い込むアルマンは、セオ演じるオリンピアと踊ってマルグリッドに見せつける。
ジゼルデビューしたばかりのセオはオーラが出てきた?色香ある雰囲気がよかった。
オランピアを家に連れ帰って押し倒すも、自己嫌悪に陥るアルマン。
そこへ、病躯をおして黒衣(死が近い?)のマルグリッドが訪れます。

バラード第1番(真央ちゃんのエキシの曲)の黒のPDD。圧巻でした!
別離の本当の理由を言えず「これ以上私に辛く当たらないで」と懇願するマルグリッドと
もう一度やり直せるのではないかと思うアルマン。
アイスダンスのようにツイストしたり、ローテーションリフトの連続で
アクロバティックな振付ですが、見事なパートナーシップ。
女性ダンサーの衣装を男性ダンサーが脱がせる場面あり(18禁?)
2人の葛藤や激情が伝わってきて、さすがの表現力。3つのPDDの中では一番好きかも。
マノンの幻想を見て、デュヴァル氏との約束を思い出し再びアルマンから去るマルグリッド。
目覚めて彼女がいないことにショックを受け、一夜限りの事だと思ったアルマン。

華麗なる大ポロネーズが流れて、舞踏会が始まります。いい曲使うなー
確か映画「The Pianist」でも使用されてたっけ。そういえばバラード一番も!
マルグリッドだけでなく、プリュダンスも衣装替えが多い~
憎むことでしか愛を表現できないアルマンは、オリンピアと踊るも
酔いにまかせて、マルグリッドにしつこく手紙を渡します。
封筒を開けて札束(一夜の代金)がこぼれ落ちると、マルグリッドはショックで倒れて
ガストンに運ばれていきます。後悔して走り去るアルマン。
2人はそれ以来2度と会うことはなく、マルグリットは独り寂しく死んでいきます。。。(涙)

アルマンはナニーヌから渡されたマルグリッドの日記を読んで、初めて真実を知ります。
血のような真っ赤なドレスを着て、やっとの思いで劇場に行くマルグリッド。
彼と初めて出会った思い出の「マノン・レスコー」を観るためです。
3幕沼地でマノンがデ・グリューに抱かれて息絶えるシーンを見て、自分と重ね合わせます。
自宅に戻ってマノンとデ・グリューの幻想を見るマルグリッド。ここの演出が良かった!
愛するデ・グリューの腕の中で息絶えるマノンに対して、誰もそばにいない孤独感が切ない。
マノンの幻が息絶えると、マルグリッドも倒れてしまいます。
幸せだった頃の白のPDDの曲が流れる中、アルマンを思いながら静かに息を引き取ります。。。
音楽が終わると同時に、ボッレが静かに日記を閉じて幕。

Lady of the Camellias5

ノイマイヤー氏の原作の思い入れを感じる作品で、大人なバレエ。
ストーリーはわかっているので、ディテールを味わうのが醍醐味でしょうか。
NY Timesでは酷評されてたけど、私は好きです。小説&ショパンが好きなので。
気に入らなかったのは、ピロウ投げとアルマンが床をゴロゴロする振付くらい。
マノンのPDDはマーフィ&ホールバーグの予定が、パルト&タムに変更になったのが残念~
妖気なパルトが良かった。

Lady of the Camellias6

ケントは、愛する人を思って身を引きひっそり死んでゆく年上女性のイメージにピッタリ!
悲しみや苦悩が、抑制された表現に滲み出ていたカンジ。
様々なリフトを難なくこなして、まっすぐな熱情を表現していたボッレ。
ひたむきなアルマンに、心が打たれました。

Lady of the Camellias7

物語性を感じる演劇的な演出、当時のパリサロンを思わせるショパンの曲
繊細な心理描写を表すノイマイヤーの振付、マルガリットの心の状態を表す衣装の数々
「Manon Lescaut」を象徴的に絡めて、主人公の心理描写にしているのも◎
ただ、ドラマティックバレエという点では「マノン」の方がもっと好きかなぁ。再演希望!

Lady of the Camellias9

音楽がほぼピアノ演奏のみ というのも渋く、3人のピアニストが弾いていましたが
舞台上のダンサーと合わせるのは大変そう。オケピにモニターがあるのかな?
ダンサーが音楽をよく聴いてるのがわかって、素晴らしかった!
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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

No title

良いなぁ。読んでいるだけで、情景が浮かんできます。
カレンダーを見ながら、私なら行くという演目の一つがボッレとケントの「椿姫」でした。

演劇のような演出だったのですね。劇中で「マノン」も楽しめるなんて、二度美味しい演目ですね。

ひまわり娘さま

ボッレとケントは、小説のイメージにピッタリでした☆
小説ではアルマンからもらった「マノン・レスコー」の本をマルグリッドが愛読してたけど、バレエでは心理描写の演出になってました。振付家ノイマイヤーさんは、マノンも愛読してたのかも?

ひまわり娘さんと御一緒したフェリの「マノン」に感動したことを今でも覚えています。あれ以来、ABTで上演してないんですよー
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