The Little Mermaid(San Francisco Ballet)

サンフランシスコバレエの「人魚姫」が、16日PBSで放送されました。

ジョン・ノイマイヤーによる振付で、2005年デンマーク・ロイヤル・バレエで初演。
2007年改訂されてハンブルクバレエで初演。
アンデルセンの原作に基に、演出・舞台装置・照明・衣装もノイマイヤーによるもので
独自の世界を作り出しています。

原作も悲しいお話ですが 悲しい を通り越して、重いバレエです。。。

The Mermaid: Yuan Yuan Tan
Edvard/The Prince: Tiit Helimets
Henriette/The Princess: Sarah Van Patten
The Poet: Lloyd Riggins
The Sea Witch: Davit Karapetyan


原作者アンデルセンの苦悩の愛が創作に反映されたことを、モチーフにしていて
アンデルセン自身を詩人役で登場させて、ストーリー・テラーにする手法。
(アンデルセンは、同性である親友に恋心を抱くも彼は女性と結婚してしまい
その絶望感から「人魚姫」を書き上げた と言われています)

プロローグ、詩人が船上で友人(愛する人)エドヴァードの結婚式を回想。
悲しむ詩人の涙が、海へ落ちていきます。
成就せぬエドヴァートへの想いが、海の底で人魚姫を創り出して
物語は進んで行きます。

詩人役は、ハンブルク・バレエからゲスト出演のロイド・リギンス。
人魚姫役は、ヤンヤン・タンでサンフランシスコ・バレエのプリンシパル。

人魚姫をどうやってバレエで表現したのかな と思ってたけど
衣装は、水色のパンタロン風な長袴が尾ヒレのようで
黒子のような3人の男性にリフトされて、浮遊する姿が幻想的。
(背筋はすごいけど)
ユラユラした腕の振付が、水中のイメージにぴったり。

船では船員たちが訓練して、エドヴァートそっくりな王子はゴルフを練習。
海にゴルフボールが落ちてしまい、拾おうと王子が飛び込み
海の魔法使いが現れ嵐がおきて、溺れる王子を人魚姫が助けて恋をします。

陸に打ち上げられた王子は、人魚姫に助けられたことも知らずに
目覚めさせてくれた修道院女学生(王女)が助けてくれたと思って
彼女に恋をします。

歌舞伎からヒントを得たのか、袴の衣装に隈取りメイクの海の魔法使い
存在感があって、いい味出してました。
人魚姫は海の魔法使いに頼んで、人間の身体にしてもらいますが
このシーンが圧巻!ウロコを剥ぎとられて尾ヒレが引き裂かれていく様子が
見事に表現されていました。

美しい声とひきかえに、人間になった人魚姫は
海の魔法使いの警告通り、激痛で上手く歩くことができず
車椅子に乗せられます。

声を失い何も伝えることができず、みんなのように踊れず
子供のように王子だけを見つめる人魚姫。
王子が別の女性と愛し合うのを見て、失望する姿が切ない。

2幕、狭い部屋でもがき苦しむ人魚姫。
水中で自由に泳いでいた美しい姿とは、うって変わって痛々しい。

王子と王女は、魅力的な人物として描かれてないと思うんだけど
能天気で、ちょっと馬鹿っぽいキャラの王子(古典バレエの男役と同じ?)
暢気で無邪気な性格が、よけい残酷に感じる。

王子と王女の結婚式で、ブライドメイドをする人魚姫。
王子を殺したら人魚の姿に戻れる と海の魔法使いからナイフを渡されても
殺すことはできず、嘆く人魚姫。

ドレスと靴を引きちぎるように脱ぎ捨てるシーンが強烈で
衣裳が、彼女が流す血のように見えた。
技術的にも演劇的にもハードな役を演じたヤンヤン・タンの
感情表現が素晴らしく、涙を誘いました。

自身の分身である人魚姫に寄り添う詩人の存在感も良かった。
人魚姫が泡となって消える時、詩人が現れて人魚姫と共に踊ります。
詩人(アンデルセン)の心の痛みと重なり
一体になった魂が、星空に静かに消えていくラストが美しかった。

詩人と人魚姫の2つの苦しい恋が絡んで
船上から海底、浜辺、船内 と変わる舞台変換が見事。
セットはシンプルだけど、波に見立てた光線の演出が効果的。
レーラ・アウエルバッハの音楽は、現代音楽で
雅楽を思わせるような雰囲気も。

人魚姫って、子供向けのお話でなくて
大人な物語だったんですね。原作も読みなおさないと。

椿姫とはまた違った味わいで、心を鷲掴みにされるような
ノイマイヤーの作品。ズッシリきました。
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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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