Onegin@MET Vol.2

マチネとは違う席から、ソワレを鑑賞。タイトルロールのボッレがお目当てです。
Onegin3
オネーギンABT初演は2001年で、この時タチアナ役だったケント。
オネーギンが上演される際は、シュツットガルトバレエ芸監Reid Andersonが
キャスティングを行って、リハーサル指導するとか。

Eugene Onegin: Roberto Bolle
Tatiana: Julie Kent
Olga: Maria Riccetto
Lensky: Jared Matthews
Prince Gremin: Roman Zhurbin


序奏は、The Seasons Op.37b February: Carnival
舞台は19世紀ロシア、のどかな田舎の情景。
ケント演じる文学少女タチアナは、ちょっと根暗っぽい?垢抜けないカンジ。
知的で引っ込み思案の雰囲気が出ています。
初演時もオルガ役を踊ったリチェット。天真爛漫な性格で思慮深くなさそう。
友達らしい少女たちが入ってきて、和やかさが感じられるコールドの踊り。
鏡の遊びのシーンは、手紙と共に「鏡」がこの物語のキーであることの暗示。

レンスキー役はホーベンだったのが、代役マシューズに。
月曜デビューでは良かったようで、誠実そうな好青年で
愛と詩に生きてそうな雰囲気?

若くして人生に疲れた憂愁の貴族オネーギン演じるボッレ登場に拍手☆
肉体美が見られないのが残念だけど、長身に黒い衣装が似合っててスタイリッシュ。
帝都ペテルブルクの華やかな社交界で放蕩三昧の生活を送ったオネーギンは
あらゆる事に飽きてしまい、田舎の領地に移り住んで誰とも付き合わない変人。
親友の詩人レンスキーとだけ気が合う。

どこか尊大なカンジで、終始黒の衣装が周りから浮いて見えるオネーギン。
世の中の全てがつまらなく思えるのか、倦怠と孤独感を漂わせていて
暖かかった舞台の雰囲気を一変させます。

The Seasons Op.37b January: By the Firesideにのせて、レンスキーのソロ。
The seasonsのJuneでオルガとPDD。叙情的な音楽に合った踊りで好印象。

恋愛小説にはまってるタチアナは、都会的で影のあるオネーギンに惹かれます。
表面的にはタチアナをエスコートするけど、彼にとって田舎の文学少女は退屈。
何か別のことを考えているようで、彼女を見ていない。
自分の世界に入りこむオネーギンに、タチアナは近づこうと手を伸ばすけど届かない。
二人の噛み合わない様子が、PDDで表現されていました。

若者と娘たちが登場して、ロシア風民族舞踊?この振付も素晴らしい。
ジュテで舞台を横切るシーンは思わず拍手。

オネーギンとレンスキーは、ラーリン家を後にします。
踊ったり、家路につく者、別れを惜しむオルガとレンスキーを
紗幕の外側からオネーギンが眺める演出。
同じ演出が3幕でもあって、オネーギンの心象風景のよう。

寝室にて、乳母がタチアナを寝かせようするけど
胸がいっぱいで眠ることができず、オネーギンへの手紙を書きます。
思いを抑えきれずに、鏡を覗きこむタチアナ。
ここで表れたオネーギンは、タチアナの都合の良い妄想なので
現実のオネーギンとは違って、笑顔も優しく愛情に溢れてます。

ドラマチックな音楽の鏡のPDD、ガラでは少し物足りなさを感じたけど
緩急織り交ぜたクランコのダイナミズムと疾走感。
流れるように自然に見せた二人の演技に感動!
息の合った踊りで、ボッレのリフトとサポートが神業的。
ケントも、しなやかで優美な表現。
駆け込んできたタチアナを受け止めて、高速で振り回す動きが印象的。
位置を変えながら四回連続、闇の中で美しい円を描きます。

クライマックスで直立したケントを高々とリフトして
恋の陶酔感を表現するシーン、まるで空中に立ってるよう。
支えるのも大変だろうけど、持ち上げれる方もバランスを取るのが大変そう。
舞台からかなり高いので、高所恐怖症の人には怖そう?

第2幕 タチアナの誕生パーティー。招待客がラーリン家にやって来る。
退廃的な雰囲気のオネーギン、1幕よりさらに近寄りがたい感じで
楽しげに踊る人達に背を向けて、一人カードをもて遊びます。

人がいなくなった時を見計らって、二人きりになってから手紙を返そうとするオネーギン。
持っていてほしい と一方的なタチアナ。数回やりとりがあって
素直に身を引かない子供っぽさに、わからない娘だなー と
タチアナの後ろから両腕を回して、彼女の目の前で手紙を破いて
手のひらにのせる。子どもを諭すようで、うんざりした様子。
どうやらバレエでは、30代?の大人の男性に10代の少女が恋する年齢設定のようで
分別からタチアナの恋を拒絶するんだけど、彼女の反応に困惑気味。

バレエでは(原作と違って)、ここでグレーミン公爵が登場します。
タチアナの旦那になる人 と観客に紹介。
若いのに風格が漂う老け役専門の?ズルビン。

田舎社交界に嫌気がさし、タチアナを傷つけた気まずさを感じたオネーギンは
ラーリン家と付き合いを持つきっかけとなったレンスキーに
悪戯を仕掛けることを思いつき、オルガにちょっかいを出す。
女の扱いを知ってるオネーギンに、のせられるオルガ。
リチェットの演技も上手く、軽はずみなことをしでかしそうなカンジが出ていて
落ち着いた雰囲気のタチアナとは対照的。
婚約者に悪気はないオルガが、無邪気であればあるほど
この後の悲劇がつらい。。。音楽が陽気なのも効果的。

一人カードを並べるオネーギンの横で、気持ちを訴えようと踊るタチアナ。
メソメソした演技が似合うケント。苛立ったオネーギンは
再びオルガをしつこくダンスに誘う。やめさせようと二人の間に割って入るタチアナ。
楽しんでるオルガは、言う事をきかない。

かき乱されたレンスキーの激しい感情がよく表現されてたマシューズ。
自分だけを見ている と思っていた婚約者が、そうではなかった
純粋な理想を打ち砕かれて、侮辱された と受けとめたレンスキーは
白い手袋でオネーギンを叩いて足元に投げつけて、決闘を申し込みます。
思いがけない展開に呆然とするオネーギン、招待客の前で申し込まれた決闘から
逃げる事ができず、承諾します。 

決闘の場に向かうオネーギンとレンスキー。
先に着いたレンスキーが、オルガとこの世への未練を嘆いたソロの踊り。
オペラと同じ見せ場を、クランコが踊りで表現していて
作品への敬意を感じます。

決闘をやめるよう姉妹が懇願しても、聞く耳を持たないレンスキー。
姉妹を交互にリフトする振付も、よく出来てるなぁ。
紗幕の向こう側で行われる決闘シーン。
親友の命を奪ってしまった愚行に、後悔してもしきれないオネーギン。
苦しそうに歪んだ表情で悲しみ、何ということをしてしまったんだ! と
オネーギンの心の叫びが聞こえてきそうでした。
ちなみに、原作者プーシキンは妻に言い寄る男と決闘して37歳で亡くなっています。

三幕、田舎とはガラリと雰囲気の異なるグレーミン公爵邸の舞踏会。
幕が上がると、ダンサーたちが舞台上に並んでます。
名門貴族の豪邸ぶりを表すセットや衣裳で、ダンサーたちの表情も
どこかツンとすましたようなカンジで、2幕とは別世界。

群舞の後、寂寥感漂うボッレ登場。老けメイクの方が、哀れみが増しますね。
軽率な行いから親友を殺してしまったオネーギンは
レンスキーの亡霊から逃げるように、放浪の旅に。
その旅にも飽きて、ふらふらとペテルブルクに戻って来ます。
原作とは異なって、10年以上の歳月が流れてた設定のよう。

舞台が暗くなり客たちの姿が消えて、過去の放蕩生活・恋愛遊戯の記憶が蘇る。
女性が次々と現れて、オネーギンと踊っては姿が消えていく幻影。
何人もサポートするオネーギン役は大変だー

疲れた足取りで客達に背を向けて座る姿は、昔と同じで孤独感が漂う。
グレーミン公爵が、若い夫人を伴って登場。
素朴な田舎令嬢だったタチアナが、今では社交界から尊敬を集めて
自信に満ちた美しさと気品で溢れています。
公爵夫妻のPDDは、タチアナの今の幸せを象徴するシーンで美しかった!
この踊りが幸福感で輝いているほど、オネーギンの失った物の大きさが感じられる。

かつて自分が傷つけたタチアナだ と気がつき愕然とするオネーギンは
我を忘れてタチアナを見つめます。グレーミン公爵が、オネーギンに妻を紹介。
再会しても動揺を見せず、節度ある態度で接するタチアナに恋焦がれます。
ちなみに、タチアナはロシア人が憧れる理想の女性 だそうで
トルストイの「アンナ・カレーニナ」と比べると興味深い。 

公爵夫妻が去った後、広間を後にするオネーギン。
1幕同様、紗幕の内側を眺める演出で
過去に犯した過ちや亡くなったレンスキーの幻影が、オネーギンを苦しめます。

タチアナの部屋。舞台奥に紗幕があり、下手に入口、上手にテーブル(鏡がある)
オネーギンからの手紙を読むタチアナの心は乱れています。
グレーミン公爵が入って来て、一人にしないで と夫に抱きつくタチアナ。
夫の留守中もしオネーギンが来たら。。。とタチアナの不安を表す上手い演出。
優しく抱きしめて部屋から去っていく公爵、落ち着いた雰囲気のズルビン。
ケントより年上に見える演技がすごい。

紗幕の向こうにオネーギンが駆け込んできて、入口前でしばし行ったり来たりします。
タチアナも、うろたえながら部屋の中を行き来する動きが
心の揺れを表していて◎

圧巻だった手紙のPDD、激しい感情の嵐が吹き荒れる官能的な踊り。
部屋に駆け込んできて、タチアナの足下に跪くボッレ。手が美しい~
離れようとするタチアナを何度も追いかけては掴んで
すがりつき抱きしめる。
2幕から3幕のオネーギンの変わり様に、ついていけない という人もいるようですが
たぶん自分が失ったものを、タチアナに託して取り戻したいのかなぁ。
ちなみに、原作ではオネーギンは手紙をつき返したり破ったりせずに
タチアナと再会するまで、大切に持っているのです。

少女の頃に見た夢が現実となり、オネーギンと情熱的に踊るタチアナ。
年月が一気に巻き戻されて感情が押し寄せてくるよう。
激しい求愛に揺らぎそうになりながらも、振り払って
かつてオネーギンが自分の目の前で、自分が送った手紙を破ったように
今度はタチアナが彼からの手紙を目の前で破り
扉を指差し、立ち去るように命じます。
絶望したオネーギンは、部屋から駆け去っていき
独りになって悲しみで身を震わせるタチアナが、手紙の破片を手にとって幕。

ダンサーたちが、オネーギン役やタチアナ役を踊りたがるのも納得の作品。
良い作品は、やはり音楽を大切にしてるなーとも思った。
オペラ「チェレヴィツキ」の曲も沢山使われているようなので、機会があったら見てみたい。
Onegin8
衣装も舞台美術のセンスも良くて、美しい舞台。
Onegin9
来年もぜひ上演してほしいです。

☆NY Timesのレビューは、こちら
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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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